インテリアデザイナー 竹内三ツ木の  日本近代建築紀行
 
Vol.204



旧 シャープ邸 「萌黄の館」 (神戸市)

関西空港から神戸へ向かう方法はいろいろあるが、今回は高速船で行く事にした。
春の日差しに輝く凪の大阪湾の上に浮かぶ神戸の街は陽炎の中で、蜃気楼のように見え、25分位で神戸ポートアイランドに着く。
港神戸は観光の街でもあり、いつ来ても大変な賑わいである。
1995年の阪神淡路大震災の被害も見事に復旧され、今では人々の意識から風化しない様に意図的に残した物以外、当事の悲惨な状況は形の上では想像できない。
地元の方々はじめ、
復旧に携わった人々の懸命な努力に頭の下がる思いである。
 
  ポートアイランドから目的の萌黄の館までは車で三十分程である。 中心街から ゆるやかな坂を上り切ると、そこは異国情緒あふれる北野の街であり、神戸観光の定番の一つであるここは、異人館めぐりの観光客で大にぎわいである。
  中でも人気の風見鶏の館と向かい合う様に建つ「萌黄の館」は、 コロニアル様式の造りで、その名の通り、薄みどり色に輝く。以前は「白い異人館」と呼ばれていたが、今は建築当時の萌黄色に塗り替えられた。
  木造二階建のこの建物は、1903年、アメリカ総領事のハニー・シャープの邸宅として、英国人建築家A・ N・ハンセルの設計で建築された。
真ん中に廊下を取り、 南側の玄関から入ると右に居間、食堂、厨房があり、左には応接室、書斎が並び、二階は廊下を挟んで寝室が二つと子供部屋、化粧室等が配置されている。 各部屋に暖炉があり、そ のために煉瓦積みの煙突が屋根の上に突き出している。 三本の煙突は先の大震災で落下したが、この
内の一本は落下した当時のまま、中庭に保存してある。
  また、 一階、二階とも各部屋に張り出し窓を設け、室内を広く使いやすくしており、外観的にもアクセント になっている。
 この建物の中での見所は、何と言っても二階のベランダである。 本来コロニアル様式では、開放された 吹き抜けのベランダが普通であるが、ここではガラス入りの日本式の引き違い戸の窓になっている。日本 の冬には防寒の工夫が必要だったのであろうか。それでも、このベランダからは神戸の街が一望できて、 その開放感は損なわれてはいない。
  開国後、四十数年が過ぎ、独立国家として力を付けたこの国との外交の激務の中、ハニー・シャープは ひとときの安らぎをここに求め、神戸の街を眺めたのであろうか。
  私は、ベランダでパイプをくゆらせるアメリカ人外交官の姿を思いうかべた。


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